離岸流について

暑い日が続く7月、8月は、海遊びをする方も多く、水難事故も多発します。
テレビとかでも取り上げられることが多い「離岸流」ですが、あまりにデタラメな解説内容の放送が多いので、堆積学的視点から、離岸流の危険性を解説いたします。
ある程度知識を持っていれば、離岸流にのまれるリスクを大きく回避できます。

  • そもそも離岸流って何?
  • 離岸流はどれくらい危険?
  • 発生場所は予測できるか?

離岸流って何?

離岸流(rip current リップカレント)は、簡単に言うと、文字通り、「岸から離れていく流れ」です。基本、波がある砂浜などでは普通に発生しています。
誰の監修かわかりませんが、突堤とか海に突き出た地形で発生しやすいなどと言っているのをいくつか見かけました。これは、基本、大嘘です。そういう地形の場所でも確かに起きに向かう流れは発生することはあります。しかし、そもそもその流れは離岸流ではありません。こうしたテレビの情報を鵜呑みにするとかえって危険です。

離岸流は、一見周りと変わらないような砂浜で発生するから危険なのです。海岸線をぱっと見て、「ここは大丈夫」などと判断することは、しっかりとした知識がないと危険です。

離岸流はどれくらい危険?

トップスイマーの泳ぐ速度は、秒速2mくらいです。一般人で水泳が得意という人だと、その半分の秒速1mちょっとです。トップスピードの継続時間はせいぜい数10秒です。

離岸流はどれくらいの流れかというと、平気で秒速2m以上とかになります。流れるプールで流れに逆らって歩くのも結構大変だと思いますが、あれで秒速0.5〜0.6mくらいですから、それに逆らって泳ぐなんてことは不可能です。

離岸流に遭遇してしまったら、そのまま流れに乗って沖に流されるのが一番安全です。

発生場所は予測できるか?

繰り返しになりますが、「どこで起きるかわからない」とか「海岸に突き出た地形のところで発生しやすい」などとテレビで解説していたりするのを何度かみたことありますが、これは、かなり間違った情報ですので気をつけましょう。

では、離岸流が発生している場所は予想できるのか?というと、波のでき方、砂浜の地形に関しての知識があれば、基本、予想は可能です。

なお、気をつけないといけないのは、「去年は大丈夫だったから、今年も大丈夫」などといったことはありません。砂浜の海底地形は、1年も経過したら大きく変化します。それどころか、台風が一回発生するだけで大きく変化するため、基本は砂浜では毎日地形は刻々と変化していると思っていないと危険です。

写真のように長い海岸線を持つ砂浜では、海岸線に対して斜めに当たるように入ってきます。この方向は、その海岸によって違いますし、季節などによって異なる場所もあります。

波の峰部分が比較的まっすぐ揃って同じ場所で発生しているところは、海底に高まりが形成されています。この高まりは沿岸砂州(longshore bar)という地形です。

沿岸砂州は、波が荒れると沖側に移動します。そして穏やかになると岸側に戻ります。沿岸砂州はずっと連続しているわけではなく、途中で途切れるような地形です。途切れたところは周りと比べると深くなっています。基本的には、波によって寄せられた海水は、この深い部分を通って沖に流れます。その流れに引っ張られるように離岸流が発生します。

つまり、沿岸砂州がきれいにできている場所では、基本的には強い離岸流は発生しません。沿岸砂州の切れ目ができているところ、沿岸砂州の形状が不明瞭なところでは流れが複雑になっており、離岸流が発生しやすい場所となっています。

つまり、波の形状をはっきりと観察しておけば、離岸流を回避する確率は大きく上昇します。

なお、構造物があったり、海側に突き出したような地形があったり、川の河口部などは、海底の地形が非常に複雑になりやすく、沿岸流やその他の流れも発生しやすい上に、水深も急に深くなったり、水温も急に低くなっていたりするため、基本的にはどこも危険です。

やや高いところから波のでき方を観察すると、沿岸砂州がどの辺にあって、どの辺で切れているかわかります。切れ目のところで漂流物などがあれば、それが沖へ流されている様子も観察できることがあります。そういう場所の近くでは絶対に遊ばないようにしましょう。

なお、同じ場所で波が発生していても、沿岸砂州ではなく、海底に岩が出ていたりする場合もあります。この場合は、違う流れが発生している可能性があります。地形・地質の知識がない場合は、自己判断はしないほうが無難です。

離岸流発生の注意喚起がされているような場所では絶対に遊ばないようにしましょう。



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